(1)では、それら心身及び行動の基礎は、いかにして出来上がるものなのでしょう?
   放っておいても自然に出来上がるものなのでしょうか? そのために何か必要なので
  しょうか? 
   これに関して発達心理学や脳医学等で分かっていることを見てみましょう。

   ・ スキンシップを中心とした保護者等との密接なふれ合いには、赤ちゃんの情緒を
    安定させ、良好な発達をもたらす効果がある。
     そのような密接なふれ合いによって3歳頃までに形成される関係を「基本的信頼
    関係」というが、それは保護者だけとの間で形成されるものでなく、適切なケアが
    なされれば乳児院や保育所の保育者との間でも形成され、それによって保護者との
    ふれ合いの不足を補う効果もある。
   ・ 人や物を見て判別する能力は、保護者等がふれ合い世話をする中で、赤ちゃんは
    自然に保護者等の目や鼻や口などの位置・形を正確に把握しようと努力し、それが
    視覚関係筋肉とその使い方及び識別能力の成長をもたらす。
     また、言葉の理解については、その意味をイメージする想像力が必要であるが、
    それは保護者等がものを指差して言葉を言うのを見聞きする経験を重ねることで培
    われる。

   ・ 足や手を動かすことで、それと連動して舌などの発声関連筋肉を動かす脳神経が
    発達していく。
     また、運動することは、脳内の運動に関わる分野を発達させるだけでなく、それ
    以外の知的活動分野をも活性化させる。
     さらに、空間位置を認識する力は乳幼児が自ら動く経験によって発達するなど、
    想像力や認識力は様々な行動を経験することで育成されていく。
   ・ 子どもは、@興奮も抑制も強くない「そわそわ型」→A興奮が強く抑えの効かな
    い「興奮型」→B抑制が強くなり興奮と抑制のバランスがとれて切り替えもできる
   「活発型」、の順序で発達していくが、幼児期に興奮の強さが発達していかなければ、
    発達の遅れや逆戻りが生ずる。そうならないためには、大声を出す、走り回るとい
    った自由な行動を許す機会を十分与えることが重要で、また、スキンシップのある
    遊びも効果的なようである。 

   ・ 早ければ1歳すぎ、遅くても3歳頃までに、子どもは保護者等の腕の中を安全基
    地としつつ、そこから外の世界に出て探索活動を始め、ついで、「イヤだ!イヤだ!」
    といった反抗的態度を見せるようになる。
     これらは自我の芽生えであり、自主性・自発性、いわば「自立心」が育ってきて
    いることを示している。
     子どもがこの段階に入ったことを確認できたならば、それ以降は、自発性を尊重
    する方向で食事や着替えなど出来るだけ自分でさせるようにした方が良い、例えば、
    「服を着て」など親が一方的に指示すると反抗するが、「どの服を着る?」など自
    分で選択して行うようにもっていけば、自発的にとりかかることが多い。

   ・ 小学校入学前に文字や算数を学習させても、それらは幼児の日々の生活と密接に
    結び付くものではないことから、一旦は覚えても身に付きにくい。
   ・ 絵本や図鑑には、文字を理解しようとする意欲を持たせる役割があるが、それだ
    けでなく、子どもが自分で物語の因果関係や起承転結を推論する能力を伸ばしたり、
    自発的に様々な知識を獲得する意欲を伸ばしたりする効果がある。
   ・ 絵を描くことは、自分のイメージを表現する能力を高めるとともに、イメージを
    膨らます想像力自体を伸ばし、もって創造力全体を育成する効果がある。特に、自
    分で想像するテーマを与えてそれを自由に描かせるスタイルをとるとより効果的で
    ある。

   ・ 目標を与えて、それを達成できた時にほめることは、努力によって自分を取り巻
    く状況を変えることができるんだと実感することを経験させ、それによって努力心
    を伸ばす効果がある。
   ・ 幼稚園・保育所での子ども同士の自由遊び等における、いざこざ、ケンカなどの
    相互交渉は子どものコミュニケーション能力を伸ばす効果がある。また、それに保
    育者が必要に応じて介入していくことで、集団で暮らしていくのに必要な力を、子
    ども達は学ぶことができる。

   以上を見ていくと、心身及び行動の基礎の全体について、その形成に当たって保護者
  や保育者との密接なふれ合いが大きな役割を果していることが分かります。
   また、この時期における身体の成長や運動は、そのこと自体が重要であるだけでなく、
  理解力、探究心等の芽生えを含めた精神・知的な成長を促す意味で大きな意義を有して
  います。
   更に、食事・排泄等の基本的生活習慣を身につけさせるためには、子どもが1〜3歳
  頃に自我の芽生えとともに意識する「自分でしたい」という気持ちを最大限に活かすこ
  とが重要です。
   そして、そのようにして形成される心身及び行動の基礎の中から、特に理解力・探究
  心を伸ばしていくためには、小学校就学前に文字・算数を学習させるよりも、それらの
  基盤となる想像力を伸ばすため、散歩の中での自然観察や歴史的施設の見学、農作物の
  栽培、社会的イベント等を経験させること、あるいは絵本や図鑑を見ること等によって
  様々なストーリー展開を考えさせるとともに文字・数字・知識に興味を持たせることが
  有意義であります。
   更に、創造力・表現力を伸ばすためには、自分で想像するテーマについて自由に絵に
  描かせること、加えて、努力心を伸ばしていくためには、比較的長距離の散歩ややや難
  度の高いお遊戯など、実現可能範囲内で高度な目標を与えて、それを達成した時にほめ
  てあげること、そして、社会性を伸ばしていくためには、集団での自由遊び等を経験さ
  せる中で保育者等が人間関係の調整を実践して見せてあげることが有意義であると言え
  ます。


(2)以上を見てきた中でも、保護者等の密接なふれ合いは、心身及び行動の基礎全体のベ
  ースとなるものであって、第一に達成すべき課題であることから、これに関してより詳
  細に発達心理学等の研究成果を見てみましょう。

  ・ かつて、乳児院または病院に長期入院した乳幼児は、幼児死亡率が高く、また、精
   神的に異常を来すことが多かった。これらは「ホスピタリズム」と呼ばれて社会問題
   となった。これに対処するため、乳児院等において十分な栄養補給、衛生管理の改善
   (後には運動環境改善のための施設面積拡充も加わる)といった対策がなされたとこ
   ろ、死亡率は低下したが、精神的な問題は解決されなかった。
    このことについて研究が進められたところ、乳幼児の発達には、身近な人との基本
   的信頼関係が欠かせないことが判明し、これが発達心理学で「アタッチメント」(また
   は「愛着」)と呼ばれるようになった。

  ・ アタッチメントの研究が始まった頃は、それは親子の間でしか形成されないものと
   見なされ、3歳未満では日中の保育所保育ですら好ましくないものとされたが、研究
   の進展によって、やり方によっては、親のみならず保育者等との間でも形成されるこ
   とが分かった。
    そのやり方とは、子どもに対し出来るだけ同じ保育者等が密接にふれ合うことであ
   り、更には、子どもの呼びかけに対して出来るだけすぐに応答・ケアする「即応性」
   が重要である。 
    この研究成果を受けて、乳児院等で保育者の定数が増加されることとなり(保育者
   一人当たりで見る子どもの数が大きく減り、子どもに対する担任制も導入された)、
   この結果、ポスピタリズム問題は無くなった。

  ・ アタッチメントは、通常は1歳〜3歳の頃に形成されるが、虐待やネグレクトがあ
   った場合は、この時期を過ぎてもアタッチメントが形成されないこともある。また、
   乳幼児にとっては、迷子や事故を直前回避した体験など大人から見るとそれほどの恐
   怖でもない体験でもトラウマになりうるのであって、それが積み重なってアタッチメ
   ント形成の阻害要因となることもある。
    このため、虐待等の明らかな問題が無い子どもであっても、子どもの反応(過度の
   無表情、初見の他人への無警戒、過剰な驚愕、過度の警戒、注意すると硬直)からア
   タッチメント形成阻害(「愛着障害」とも言う)が疑われる場合は、アタッチメントを
   回復させるようなケアが必要である。また、乳幼児期においては、そのケアによって
   アタッチメントは比較的容易に回復できるが、学童期以上になると、それは年齢が上
   がるにつれどんどん困難になっていく。
  ・ アタッチメントを回復させるケアは、親のみでなく乳児院等の保育者でも可能であ
   り、内容的には上述のような密接で即応性のあるケアが有効で、幼児化とみなされる
   行為も許すような優しい接し方も有意義である。また、体罰や大声で叱る等の恐怖感
   を与える行為は避けるべきである。

  これらを踏まえると、認定こども園にも何らかの理由でアタッチメント形成が阻害され
 た子どもが入所してくる可能性は十分にあり、このため、保育に当たっては、可愛がるこ
 とを大切にし、体罰や怒鳴り散らすような指導は慎まなければなりません。また、発達
 の遅れが見られる子に対しては、そのことを十分配慮して丁寧で優しい指導を心掛ける
 べきでしょう。

     

「なぜ、そのようなやり方なのか?」「なぜ、こんなことをするのか?」保育・幼児
教育について、そのような疑問を持たれることもあると思います。

 それに対し、「今までずっとそうやってきましたから」、「幼児教育ってそんなも
のですよ」との答えだったら、納得できないことでしょう。


 本来、保育・幼児教育には、発達心理学や小児医学等のキチンとした理論的裏付け
があります。

 このページでは、当園の理論的裏付けとなっているものを説明するとともに、それ
を踏まえた保育・幼児教育の重点課題を改めてお示しします。
 また、
それに基づいて策定した具体的プログラムは「滝内保育園保育・教育課程」
ご覧ください。
 

滝内保育園の保育・幼児教育理論
について

○前提となる考え方(人を育てるために認定こども園が果たすべき役割)

2 滝内保育園の保育・幼児教育の重点課題

  Q:文字・数字教育は一切やらないんですか?

Q:想像力・創造力・表現力・努力心等が重要であるとのこ
  とですが、これらをどうやって伸ばしていくのですか?

Q:コミュニケーション能力などの社会性は、どうやって伸ば
  していくのですか?

     以上の理論的裏付けを踏まえ、当園としては、重点課題を次のように設定しています。

 
  @子どもに保育者との間で密接な基本的信頼関係を構築させるため、
    特に、1〜3歳頃の時期に自我の芽生えが確認されるまでは、保育者は園児とスキンシッ
   プも介在させて愛情豊かにふれ合うこととし、自我の芽生えが確認された後においても、子
   どもの自主性・自発性を尊重しつつ園児とのふれ合いを大切にする。

  A食事・排泄等の基本的生活習慣を自立させるため、
    自我の芽生えが確認された以降に、自然に見せる「自分でしたい」という気持ちを活かし
   ながら、食事・排泄・衣服の着脱等は自分で出来るようになるよう、各人の発達の状況を踏
   まえつつ指導していく。また、特に食事について、食べ物の大切さや食事の重要性について
   気づかせるために農作物栽培・調理等の食育活動を行う。

  B身体を健全に成長させるため、
   
 3歳児以上のクラスでは、毎日の日課に体操を入れ、毎週の活動に外での散歩を入れると
   ともに、年3回程度は長距離の散歩を行い、また、運動機会の少ない冬季には身体発達のた
   めに考案されたリズム運動及び雪遊びを取り入れる。
    更には、全てのクラスにおいて、園内ホール及び園庭での自由遊びの時間を多く取り、加
   えて乾布摩擦及び冬季以外の素足保育を行う。

  C理解力、探究心、創造力、表現力、努力心、社会性を伸ばしていくため、
    3歳児以上のクラスでは、想像して絵を描かせる授業を数多く取り入れる。また、長距離
   の散歩をして自然や歴史に触れさせたり、農作物栽培、お遊戯会等練習や社会的なイベント
   参加などによって、目標を達成する体験を含む様々な経験をさせる。
    更には、全てのクラスにおいて、自由遊びの時に絵本や図鑑等に自由に触れさせるなどし
   て文字や様々な知識に興味を持たせ、加えて、日々他の子との交わりを経験させる中で、友
   好的調整を実践して見せることで、社会性の能力の向上を図る。

  Dこれらの前提として認定こども園生活における安全と栄養の確保に十分配慮する。

  ○ 以上の重点課題を達成する上で、他の子とのトラブル調整や安全確保等のために時には厳
   しく指導しなければならないこともあるが、その際に注意しなければならないことがある。

   ・ 言うことを聞かない、何度教えてもできない等の理由から、のけ者にしてはならない。
   ・ 体罰は行わず、怒鳴り散らすように叱ることは慎む。叱るときには、「叱りすぎていないか?」
    と自分に問いかける。
   ・ 発達の遅れが見られる子やアタッチメント形成阻害の可能性がある子には、特に優しい指
    導・ケアを心掛ける。
   ・ 不適切な指導を誘発しかねない運動会やお遊戯会での過度に高度な演技等は取り入れない。
   

A: 上で述べたように、幼児期は、心身及び行動の基礎をしっかり作り上げることを第一
  に考えるべきであり、また、文字や算数などを教え込んでも、一旦は覚えても身につき
  にくいようです。

   ただし、小学校入学に当たっては、机・椅子スタイルにて先生の言うことをきちんと
  聞いて学習する態度を身につけられるかが極めて重要になってくることから、当園では、
  卒園前の2か月間において、そのような形での勉強会を実施しています。よって、この
  勉強会では、ひら仮名の書き方や簡単な足し算などを教えますが、その主たる目的は、
  真面目な学習態度とはどういうものなのかを子ども達に理解させることです。


   また、子どもが、自然に文字や数字に興味を持って自主的に覚えていくことは探究心
  を育てるために有意義であるため、ひらがなや数字の書かれたポスター等を子どもの見
  やすい場所に掲示したり、数を数える要素のある遊びや運動を取り入れたり、園児たち
  の求めに応じて絵本を貸して自分で読ませたり、読み聞かせたりしています。


   加えて、子どもが自然に興味を持って自発的に覚えていくものとして、動物生態、外
  国のこと、昔の事柄など、子どもたちは自然や社会・歴史のことに興味を持ち、それに
  関して知りたがります。

   これに応じて知識を提供することは探究心を育てるために有意義であり、このため当園
  では、動物や恐竜の図鑑などを園児たちに貸して自主的に読ませたり、散歩の際に草花や
  川魚を観察したり、近くにある歴史遺産である三内丸山遺跡を遠足の際に見学させたりし
  ています。また、外国文化にも触れさせるために、年長組において週に一度英会話スクー
  ルを実施しています。

A: 上で述べたように、言葉や知識を理解し、覚えていくためには、その物や概念をイメ
 ージできる想像力を伸ばしていく必要があります。
  また、小学校以上での学習活動のみならず社会人になってからの仕事等において極め
 て重要な資質である創造力は、この想像力と密接に結びついています。
  これを伸ばしていくため、当園では、想像したことを絵に描く機会を多く設けていま
 す。そのような絵の描き方をすることは、想像力と表現力を同時に高める効果があり、
 よって創造力を育てることにつながります。
  加えて、様々な経験は想像力のベースとなることから、運動・散歩・遠足、更には、
 青森市ならではの地域イベントへの参加によって色々な経験を積ませています。
 
  また、これに関連して、集中力を身につけるよう、出来るだけ机・椅子スタイルにて
 絵を描くようにしております。
  更に、努力する心を育成するため、遠出の遠足や運動会、お遊戯会等において、努力
 した結果について誉めることで、その意義を実感させるようにしています。
 

  加えて、探究心や想像力に結びつくものとして、また、人生を幸せにおくるために必
 要なものとして、感性・表現力は重要なものです。

  これを育てる目的で、滝内保育園では、絵を描くことのほかに、歌をうたうこと、音
 楽に合わせて踊ること、ピアニカや太鼓を演奏すること、また、季節ならでは水遊び、
 雪遊びなどを日課や年間行事に取り入れるとともに、日々の散歩や園庭遊びなどにおい
 て自然の生き物とふれ合い、美しい、あるいは興味深い風景を一緒に見て、それについ
 て語り合うことを大切にしています。
A: これまで述べてきたことのほかに、社会で生きていく上で重要な能力がもう一つ
 あります。それが「社会性」の能力です。
  具体的な例としては、友達の輪に入って仲良くすること、グループで協力し合う
 こと、必要な場合にキチンとした集団行動がとれることです。

  社会性の基礎的な部分は、遊びを中心とした人との係わり合いの中で形成される
 ものであり、そういう意味で、他の子と密接にふれ合って遊び、寝食をともにする
 中で、うまく仲間に入れなかったり、自分の要求が通らずにケンカしたり泣いたり
 して、それに対して自分なりに考え、あるいは保育者の指導・助言に学んで、自分
 の言動を工夫していく、そんな認定こども園生活での経験が社会性の基礎を作って
 いくのです。

  また、グループで協力し合うことについては、毎月のお誕生会での出し物や運動
 会・お遊戯会などにおいて、クラスみんなで一つのことを成し遂げさせるように指
 導しています。さらに、適切な集団行動の能力については、毎日の朝と帰りの挨拶
 や食事、毎週の朝礼などにおいて言葉遣い・礼儀作法・交通安全等の適切・的確な
 行動について指導しています。

  そして、社会性に関してもう一つ配慮すべきことが「いじめ的行動」です。
 「いじめ」というと小学校以上のことと思われがちですが、自分の欲しいおもちゃ
 を他の子から実力で奪い取ろうとする行為はどんな子でも1歳前後から見られるも
 のであり、また、3歳ぐらいになると、自分の強さを誇るようになる中で他の子を
 力づくでねじ伏せようとしたりします。
  更に年齢が進むと、社会性が身についてくるゆえに出てくるいじめ的行動もあり
 ます。例えば、仲良しグループで行動するようになる中で誰かが強引な言動をした
 場合にこれを仲間外れにしようとしたり、また、ある子が悪いことをした場合に、
 周りにいた子ども達が一斉にその子を激しく非難するといったことがあり、そこに
 は序列意識の中でより優位な立場に立ちたいという思いが強く影響しているように
 見受けられることがあります。
  それらは健全な成長に伴って現れるものであって、まだ可愛らしい範疇に入って
 いるように見えますが、成長するにつれて行動のパワーは強力なものになっていき
 ますので、これを放置しておくと小学校以上において深刻ないじめに発展していく
 可能性もあるものと思われます。

  このため、当園では、そういった行動を発見したその時に「おもちゃを無理矢理
 取られたり、押し倒されたり、仲間はずれにされたり、ひどい悪口を言われたら自
 分ならどう思う?」と子どもに問いかけたり、いじめを戒める趣旨のストーリーが
 描かれた絵本を読み聞かせるなどして、いじめは悪い行為であることを丁寧に繰り
 返し指導しています。




参考資料
 ・「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」平成26年4月30日内閣総理大臣、
   文部科学大臣、厚生労働大臣告示 
 ・「保育所保育指針」平成20年3月28日厚生労働大臣告示
 
・「育児百科」日赤医療センター小児保健部部長薗部友良監修、主婦と生活社
 ・「よくわかる乳幼児心理学」内田伸子編、ミネルヴァ書房
 ・「よくわかる発達心理学」無藤隆・岡本祐子・大坪治彦編、ミネルヴァ書房
 ・「よくわかる認知発達とその支援」子安増生編、ミネルヴァ書房
 ・「児童心理学入門」藤永保・永野重史・依田明共編、新曜社
 ・
「よく分かる小児保健」竹内義博・大矢紀昭編、ミネルヴァ書房
 ・「脳をきたえる「じゃれつき遊び」」正木健雄・井上高光・野尻ヒデ著、小学館
 ・「アタッチメント 子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって」
   庄司順一、奥山眞紀子、久保田まり著、明石書店
 ・「改訂版 全国保育士会倫理綱領ガイドブック」柏女霊峰監修、全国保育士会編 

  リストラや低賃金に代表されるように、現代は非常に厳しい時代です。
  
日本を初め多くの国々において高度成長期は過ぎ去り、ほとんどインド・アフリカに頼る
 だけとなった経緯を踏まえると、この状況は今後も大きく変わることはないでしょう。


  こんな時代にあっても、元気にいきいきと生き抜ける人間に育てたい。
   子を育てる者ならば誰しも思うところでしょう。
  では、この現代社会をいきいきと生き抜くためには、どのような能力・資質が必要な
 のでしょうか?


  まず、就職を考えると、以前のような学歴一辺倒は無くなりましたが、ある程
 度の学歴
があった方が優位になる傾向は今後も続きそうであり、このため、学校
 での勉学活動の基
礎となる理解力・思考力が重要となります。
  
  ついで、就職後のことを考えると、どの会社も、高学歴よりも実際に仕事ので
 きる
人間を高く評価していかなければ生き残れない時代になっています。
  そういう意味で高く評価される人間とは、利用者ニーズや会社の戦略を正確に
 理解する
能力、また、その具体的実現のための良い方法を探求する能力、それを
 踏まえて優れた企
画を創造する能力を持っている人であると思われます。
  更には、その企画を上司や仕事相手に分かりやすく示す表現力、そして、同僚
 等と協力
して実行していくためのコミュニケーション能力及び対人調整能力と
 いった社会性の能力
も必要になります。加えて、困難にあっても粘り強く頑張っ
 ていく努力心も欠かせません。


   また、仕事で評価されて勤め続けられても、給料は余り上がらないでしょうか
 ら、限ら
れた収入で家計を守る必要があり、また、お金の掛からない楽しみを持
 つことも重要です。

  このため、上手な買い物の仕方、安い食材で美味しく栄養ある料理をつくる方
 法など家
計やりくりの工夫・技術が必要になってきます。また、ハイキングや
 園芸、あるいは近所
付き合いやボランティア等の低出費な趣味や社会活動に取
 り組むことも有意義です。

  それらを実践するためには、様々な知識・情報を吸収し応用していくための理
 解力・思
考力・探求心・創造力が必要ですし、人と交わる社会性の能力も重要
 です。そして、何よ
り健康な体が必要です。

  以上を要約すると、現代をいきいきと生き抜くためには、理解力・思考力・探
 求心・創
造力・表現力・努力心・社会性の能力、そして健康な体が重要になると
 言えます。

   ただし、それらの中には大人になってから身につけるものもあります。子ども
 の時に獲
得できるのは、それらの基礎的なもの、まずは健康な体がそうですし、
 また、社会生活の
基盤となる食事・排泄・着替え等の「基本的生活習慣」もそれ
 に該当します。では、この
二つ以外で、理解力、探究力、創造力等の基礎となる
 ものは何でしょうか? 

  


  
それを探るため、そもそも人は、どんな能力を持って生まれてきて、それがどのよう
 に変化していくのか、を見てみましょう。

  生まれたばかりの時、人の目はぼんやりとしか見えず、物や人を見分けることが出来
 ません。音は聞くことができても言葉などの理解はできず、声は泣き声しか出せず、ま
 た、自ら移動することはおろか、手先も自由に動かせません。

  しかし、順調に成長すれば、6歳頃までに、物や人を見分け、人の話す言葉を聞いて
 理解し、自分の意志を言葉で表現するようになります。また、自ら立ち歩き、必要な物
 を手にとって思うように扱い、自立生活に必要な食事・排泄等を自分で行うようになり
 ます。
  更には、他人との間で意見を調整したり、ある程度の社会ルールを把握して、それに
 沿って行動し、加えて、広く自然や社会の事物に興味を持って、それらについて知識を
 探求する、といったことまで出来るようになるのです。

  これらは心身及び行動の基礎と言えるものですが、この中に、上に掲げた理解力、探
 究力、創造力等の諸々の能力の芽生えがあることが見て取れると思います。
  この基礎をしっかりと作り上げ、そこで芽生えた能力を伸ばしていくことが、子ども
 時代において非常に重要なことなのです。

  そして、子ども時代の中でも0〜6歳を受け持つ認定こども園としては、まずは、こ
 の心身及び行動の基礎が身につくよう導いていくことが重要であると言えます。

1 滝内保育園の保育・幼児教育の理論的裏付けとなっているもの