「なぜ、そのようなやり方なのか?」「なぜ、こんなことをするのか?」保育・幼児
教育について、そのような疑問を持たれることもあると思います。
それに対し、「今までずっとそうやってきましたから」、「幼児教育ってそんなも
のですよ」との答えだったら、納得できないことでしょう。
本来、保育・幼児教育には、発達心理学や小児医学等のキチンとした理論的裏付け
があります。
このページでは、当園の理論的裏付けとなっているものを説明するとともに、それ
を踏まえた保育・幼児教育の重点課題を改めてお示しします。
また、それに基づいて策定した具体的プログラムは「滝内保育園保育・教育課程」を
ご覧ください。
滝内保育園の保育・幼児教育理論
について
○前提となる考え方(人を育てるために認定こども園が果たすべき役割)
2 滝内保育園の保育・幼児教育の重点課題
Q:文字・数字教育は一切やらないんですか?
Q:想像力・創造力・表現力・努力心等が重要であるとのこ
とですが、これらをどうやって伸ばしていくのですか?
Q:コミュニケーション能力などの社会性は、どうやって伸ば
していくのですか?
以上の理論的裏付けを踏まえ、当園としては、重点課題を次のように設定しています。
@子どもに保育者との間で密接な基本的信頼関係を構築させるため、
特に、1〜3歳頃の時期に自我の芽生えが確認されるまでは、保育者は園児とスキンシッ
プも介在させて愛情豊かにふれ合うこととし、自我の芽生えが確認された後においても、子
どもの自主性・自発性を尊重しつつ園児とのふれ合いを大切にする。
A食事・排泄等の基本的生活習慣を自立させるため、
自我の芽生えが確認された以降に、自然に見せる「自分でしたい」という気持ちを活かし
ながら、食事・排泄・衣服の着脱等は自分で出来るようになるよう、各人の発達の状況を踏
まえつつ指導していく。また、特に食事について、食べ物の大切さや食事の重要性について
気づかせるために農作物栽培・調理等の食育活動を行う。
B身体を健全に成長させるため、
3歳児以上のクラスでは、毎日の日課に体操を入れ、毎週の活動に外での散歩を入れると
ともに、年3回程度は長距離の散歩を行い、また、運動機会の少ない冬季には身体発達のた
めに考案されたリズム運動及び雪遊びを取り入れる。
更には、全てのクラスにおいて、園内ホール及び園庭での自由遊びの時間を多く取り、加
えて乾布摩擦及び冬季以外の素足保育を行う。
C理解力、探究心、創造力、表現力、努力心、社会性を伸ばしていくため、
3歳児以上のクラスでは、想像して絵を描かせる授業を数多く取り入れる。また、長距離
の散歩をして自然や歴史に触れさせたり、農作物栽培、お遊戯会等練習や社会的なイベント
参加などによって、目標を達成する体験を含む様々な経験をさせる。
更には、全てのクラスにおいて、自由遊びの時に絵本や図鑑等に自由に触れさせるなどし
て文字や様々な知識に興味を持たせ、加えて、日々他の子との交わりを経験させる中で、友
好的調整を実践して見せることで、社会性の能力の向上を図る。
Dこれらの前提として認定こども園生活における安全と栄養の確保に十分配慮する。
○ 以上の重点課題を達成する上で、他の子とのトラブル調整や安全確保等のために時には厳
しく指導しなければならないこともあるが、その際に注意しなければならないことがある。
・ 言うことを聞かない、何度教えてもできない等の理由から、のけ者にしてはならない。
・ 体罰は行わず、怒鳴り散らすように叱ることは慎む。叱るときには、「叱りすぎていないか?」
と自分に問いかける。
・ 発達の遅れが見られる子やアタッチメント形成阻害の可能性がある子には、特に優しい指
導・ケアを心掛ける。
・ 不適切な指導を誘発しかねない運動会やお遊戯会での過度に高度な演技等は取り入れない。
A: 上で述べたように、幼児期は、心身及び行動の基礎をしっかり作り上げることを第一
に考えるべきであり、また、文字や算数などを教え込んでも、一旦は覚えても身につき
にくいようです。
ただし、小学校入学に当たっては、机・椅子スタイルにて先生の言うことをきちんと
聞いて学習する態度を身につけられるかが極めて重要になってくることから、当園では、
卒園前の2か月間において、そのような形での勉強会を実施しています。よって、この
勉強会では、ひら仮名の書き方や簡単な足し算などを教えますが、その主たる目的は、
真面目な学習態度とはどういうものなのかを子ども達に理解させることです。
また、子どもが、自然に文字や数字に興味を持って自主的に覚えていくことは探究心
を育てるために有意義であるため、ひらがなや数字の書かれたポスター等を子どもの見
やすい場所に掲示したり、数を数える要素のある遊びや運動を取り入れたり、園児たち
の求めに応じて絵本を貸して自分で読ませたり、読み聞かせたりしています。
加えて、子どもが自然に興味を持って自発的に覚えていくものとして、動物生態、外
国のこと、昔の事柄など、子どもたちは自然や社会・歴史のことに興味を持ち、それに
関して知りたがります。
これに応じて知識を提供することは探究心を育てるために有意義であり、このため当園
では、動物や恐竜の図鑑などを園児たちに貸して自主的に読ませたり、散歩の際に草花や
川魚を観察したり、近くにある歴史遺産である三内丸山遺跡を遠足の際に見学させたりし
ています。また、外国文化にも触れさせるために、年長組において週に一度英会話スクー
ルを実施しています。
A: 上で述べたように、言葉や知識を理解し、覚えていくためには、その物や概念をイメ
ージできる想像力を伸ばしていく必要があります。
また、小学校以上での学習活動のみならず社会人になってからの仕事等において極め
て重要な資質である創造力は、この想像力と密接に結びついています。
これを伸ばしていくため、当園では、想像したことを絵に描く機会を多く設けていま
す。そのような絵の描き方をすることは、想像力と表現力を同時に高める効果があり、
よって創造力を育てることにつながります。
加えて、様々な経験は想像力のベースとなることから、運動・散歩・遠足、更には、
青森市ならではの地域イベントへの参加によって色々な経験を積ませています。
また、これに関連して、集中力を身につけるよう、出来るだけ机・椅子スタイルにて
絵を描くようにしております。
更に、努力する心を育成するため、遠出の遠足や運動会、お遊戯会等において、努力
した結果について誉めることで、その意義を実感させるようにしています。
参考資料
・「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」平成26年4月30日内閣総理大臣、
文部科学大臣、厚生労働大臣告示
・「保育所保育指針」平成20年3月28日厚生労働大臣告示
・「育児百科」日赤医療センター小児保健部部長薗部友良監修、主婦と生活社
・「よくわかる乳幼児心理学」内田伸子編、ミネルヴァ書房
・「よくわかる発達心理学」無藤隆・岡本祐子・大坪治彦編、ミネルヴァ書房
・「よくわかる認知発達とその支援」子安増生編、ミネルヴァ書房
・「児童心理学入門」藤永保・永野重史・依田明共編、新曜社
・「よく分かる小児保健」竹内義博・大矢紀昭編、ミネルヴァ書房
・「脳をきたえる「じゃれつき遊び」」正木健雄・井上高光・野尻ヒデ著、小学館
・「アタッチメント 子ども虐待・トラウマ・対象喪失・社会的養護をめぐって」
庄司順一、奥山眞紀子、久保田まり著、明石書店
・「改訂版 全国保育士会倫理綱領ガイドブック」柏女霊峰監修、全国保育士会編
リストラや低賃金に代表されるように、現代は非常に厳しい時代です。
日本を初め多くの国々において高度成長期は過ぎ去り、ほとんどインド・アフリカに頼る
だけとなった経緯を踏まえると、この状況は今後も大きく変わることはないでしょう。
こんな時代にあっても、元気にいきいきと生き抜ける人間に育てたい。
子を育てる者ならば誰しも思うところでしょう。
では、この現代社会をいきいきと生き抜くためには、どのような能力・資質が必要な
のでしょうか?
まず、就職を考えると、以前のような学歴一辺倒は無くなりましたが、ある程
度の学歴があった方が優位になる傾向は今後も続きそうであり、このため、学校
での勉学活動の基礎となる理解力・思考力が重要となります。
ついで、就職後のことを考えると、どの会社も、高学歴よりも実際に仕事ので
きる人間を高く評価していかなければ生き残れない時代になっています。
そういう意味で高く評価される人間とは、利用者ニーズや会社の戦略を正確に
理解する能力、また、その具体的実現のための良い方法を探求する能力、それを
踏まえて優れた企画を創造する能力を持っている人であると思われます。
更には、その企画を上司や仕事相手に分かりやすく示す表現力、そして、同僚
等と協力して実行していくためのコミュニケーション能力及び対人調整能力と
いった社会性の能力も必要になります。加えて、困難にあっても粘り強く頑張っ
ていく努力心も欠かせません。
また、仕事で評価されて勤め続けられても、給料は余り上がらないでしょうか
ら、限られた収入で家計を守る必要があり、また、お金の掛からない楽しみを持
つことも重要です。
このため、上手な買い物の仕方、安い食材で美味しく栄養ある料理をつくる方
法など家計やりくりの工夫・技術が必要になってきます。また、ハイキングや
園芸、あるいは近所付き合いやボランティア等の低出費な趣味や社会活動に取
り組むことも有意義です。
それらを実践するためには、様々な知識・情報を吸収し応用していくための理
解力・思考力・探求心・創造力が必要ですし、人と交わる社会性の能力も重要
です。そして、何より健康な体が必要です。
以上を要約すると、現代をいきいきと生き抜くためには、理解力・思考力・探
求心・創造力・表現力・努力心・社会性の能力、そして健康な体が重要になると
言えます。
ただし、それらの中には大人になってから身につけるものもあります。子ども
の時に獲得できるのは、それらの基礎的なもの、まずは健康な体がそうですし、
また、社会生活の基盤となる食事・排泄・着替え等の「基本的生活習慣」もそれ
に該当します。では、この二つ以外で、理解力、探究力、創造力等の基礎となる
ものは何でしょうか?
それを探るため、そもそも人は、どんな能力を持って生まれてきて、それがどのよう
に変化していくのか、を見てみましょう。
生まれたばかりの時、人の目はぼんやりとしか見えず、物や人を見分けることが出来
ません。音は聞くことができても言葉などの理解はできず、声は泣き声しか出せず、ま
た、自ら移動することはおろか、手先も自由に動かせません。
しかし、順調に成長すれば、6歳頃までに、物や人を見分け、人の話す言葉を聞いて
理解し、自分の意志を言葉で表現するようになります。また、自ら立ち歩き、必要な物
を手にとって思うように扱い、自立生活に必要な食事・排泄等を自分で行うようになり
ます。
更には、他人との間で意見を調整したり、ある程度の社会ルールを把握して、それに
沿って行動し、加えて、広く自然や社会の事物に興味を持って、それらについて知識を
探求する、といったことまで出来るようになるのです。
これらは心身及び行動の基礎と言えるものですが、この中に、上に掲げた理解力、探
究力、創造力等の諸々の能力の芽生えがあることが見て取れると思います。
この基礎をしっかりと作り上げ、そこで芽生えた能力を伸ばしていくことが、子ども
時代において非常に重要なことなのです。
そして、子ども時代の中でも0〜6歳を受け持つ認定こども園としては、まずは、こ
の心身及び行動の基礎が身につくよう導いていくことが重要であると言えます。
1 滝内保育園の保育・幼児教育の理論的裏付けとなっているもの